ミッシング


昨日、祖母が家の中でクラゲをなくした。夕飯の和え物に使う予定だったそうだ。わたしは祖父の命に従い、家宅捜査をした。クラゲは出てこなかった。
冷やしきゅうりとクラゲの和え物。夏の味。祖母はわたしが好きなことを知っているので、季節を問わず食卓に並べてくれる。食卓といっても、飲食店を営むかたわら、大型冷凍庫の平たいシートの上に造作なく置かれるだけなのだけど。
あとで判明したのだが、クラゲは冷蔵庫の中、昆布茶の入った容器の隣に横たわっていた。静かに。今夜の冷たい食卓には夏の味が並ぶ。
そして今日、祖母は新たに玉葱をなくした。家宅捜査をするまでもなく、わたしは知っている。昨晩の行方不明者の身代わりとして差し出された生ハム・サラダの大皿に玉葱のスライスが盛られていたことを。