カメレオン

妹とノートパソコンを開いてDVDを見ていた。
わたしが制服を着ていた頃、その最後の夏、広い体育館の馴染みの薄い高い天井の下で踊った舞。伝統とよばれていた。
学園最盛期の入学年度に当たるのがわたしの学年だった。ちょうど。少子化の煽りを食らって、妹の入学した年の生徒数はわたしの代の半分だった。
完成までに一年かかる。企画、構成の段階を含めれば一年と半年だ。集大成という形容が好んでされた。

集団が持つ色や匂いが嫌いだった。どことなく同じ匂いがすること、同じ色に染まること。おぞましくさえ感じられた。
ちがう。一番に心底嫌気が差したのは言葉だ。集団の持つ言葉。ジャルゴン。
陳腐な定型文をそらで言わされることへの屈辱。センスのないジャルゴンの流布こそ、集団の恥ずべき欠陥だ。

擬態が苦手なカメレオンは捕食される。
制服を脱いでなお、そう感じる。今も。